新着記事
「捏造ですね」異例の警察官証言は、なぜ飛び出したのか…大川原化工機事件 高田剛弁護士に聞く
警察側の証人から「捏造ですね」という異例の発言が飛び出した、大川原化工機冤罪事件を巡る国賠訴訟。同社の商品である噴霧乾燥機の輸出を巡り、輸出規制ルールを所管する経産省、噴霧乾燥機が「生物兵器生産に転用」できると解釈し外事事件とするために恣意的な捜査を行った警視庁公安部、そして起訴を認めた検察庁(後に起訴取り消し)、それぞれの責任を問い、国と東京都に損害賠償を求めた。
東京地裁(桃崎剛裁判長)は12月27日、検察と警視庁の捜査の違法性を認め、国と東京都にあわせて1億6200万円余りの賠償を命じた。公安警察の強引な捜査や人質司法の問題を浮き彫りにしたこの事件で、国賠訴訟の原告代理人を務めた高田剛弁護士に話を聞いた。(ライター・梶原麻衣子)
同性カップルの婚姻届、不受理でも「結婚記念カード」を発行した役所も
同性婚を求める憲法訴訟は、2月14日に13組の同性カップルが全国4裁判所で一斉提訴する。現在、原告になる予定のカップルたちが、不受理となったことを裁判の証拠にするため、各地で婚姻届を提出している。
ただ、受理されないことは分かっていても、少なからずショックはあるようだ。1月21日、「結婚の自由をすべての人に」訴訟弁護団が主催するイベントには、婚姻届を出し終えた2組の同性カップルが登壇。「重い気持ちになった」などと感想を語った。
そんな気持ちを察してか、不受理となることは伝えつつ、異性カップルと同じように「結婚記念カード」を発行して、喜ばれた自治体もあるようだ。
ディズニー新商品、購入制限に「フェイク赤ちゃん」で対抗?…「転売ヤーの仕業」と話題に
東京ディズニーシーで4月7日に新発売となったグッズの購入をめぐり、赤ん坊の人形「フェイク赤ちゃん」をベビーカーに乗せて、「お一人様一点限り」の商品を複数購入しようとする人が現れたとネットで話題になっている。
SNS上では「そこまでして複数買うのか」「他の買いたい人にとって迷惑でしかない」などの声があがっており、中には「転売ヤーの仕業」と転売目的で複数購入しようとする人によるものだとする指摘もあった。
この日発売されたのは人気キャラクター「ダッフィー」などの新グッズ。売られているショップの整理券を手に入れるためか、開園数時間前の深夜から多くの人が列を作る様子がツイッターなどで投稿されるなど注目されていた。
「フェイク赤ちゃん」と連れた客の購入が実際にあったのかどうか。弁護士ドットコムニュースは東京ディズニーシーを運営するオリエンタルランドを取材したが、「個別の案件に関してはお答えしていない」との回答だった。
「お一人様一点限り」とされている場合、「お一人様」の範囲が限定されていない限りは、たとえ産まれたばかりの赤ちゃんであっても原則として含まれる。
しかし、それは「人」であることが大前提で、「フェイク赤ちゃん」のような人形が一人としてカウントされることはない。
人形を「人」だと偽り、店側を錯誤に陥らせて商品などを交付させる行為は、たとえ商品相当の対価を支払っていても「詐欺罪」に当たり得る。「2人分のお金払っているのだから、相手に金銭的な損害がない」は通用しないことを肝に銘じるべきだろう。
「朝食で地元のコシヒカリを食べよう」 新潟県南魚沼市「コシヒカリ条例」の狙いは?
朝ごはんには地元産のコシヒカリを! 朝食で地元産のコシヒカリを食べることを市民に求める一風変わった条例が9月中旬、新潟県の南魚沼市議会で全会一致で可決された。この条例には、ほかにも生産者による品質の確保や、市が給食で使うことなどが規定されている。
南魚沼市といえば、ブランド米「魚沼コシヒカリ」の産地として有名な米どころだ。この条例にはどんな狙いがあるのか? なぜ朝ごはんなのか? 南魚沼市議会の山口恒一事務局長に取材した。
「パーマ失敗」美容室に490万円を請求・・・裁判で「高額な賠償」は認められるか?
パーマの仕上がりに対して、美容室はどこまで責任を負うのだろうか。香川県の女性が「パーマの失敗」を理由に、美容室経営者に約490万円の損害賠償を求める裁判を起こし、話題になっている。
報道によると、女性側の主張はこんな内容だ。昨年1月、この美容室でデジタルパーマに失敗し、毛がもつれた。矯正のため、その後5月と7月にストレートパーマを受けたが、今度は毛が縮れ、髪を15センチ以上切ることになった。そのため、7月の結婚式が「台無しになった」のだという。
一方、美容室の経営者側は「施術ミスは5月だけ」「どこまで責任を負うべきか、裁判ではっきりさせたい」と話しているという。
専門家の目には、この裁判はどのように映るのだろうか。消費者問題にくわしい大熊裕司弁護士に意見を聞いた。
「日大不祥事」の第三者委報告書、割れた評価 「格付け委員会」が見解
弁護士らでつくる団体が4月20日、日本大学前理事長の脱税事件など一連の不祥事をめぐって、同大学の第三者委員会が発表した調査報告書の評価を発表した。
この団体は「第三者委員会報告書格付け委員会」。調査報告書を格付けすることで、第三者委員会の質や社会的評価の向上を目指している。
今回はB評価が2人、C評価が2人、D評価が4人と判断が分かれた。発足以来25件の「格付け」の中で、もっとも評価のバラつきが大きい部類だという。委員長の久保利英明弁護士は、F評価(評価不能)をつけた。
「また晒されるのでは…」義母のSNS"暴走"に悩む母親、孫の写真を勝手に投稿する行為はどこから違法か
義母が勝手に「孫の写真」をSNSに投稿していた──。
義母との関係を円満に保ちたいと思っていても、SNSがそのバランスを壊してしまうことがあります。弁護士ドットコムニュースには、そうした悩みを抱える女性からの相談が寄せられています。
女性の義母は、フォロワーが数百人いる公開アカウントで、孫である小学生の娘の顔写真を投稿していました。義母の自宅ベランダや近所の公園などで遊ぶ様子を撮影したものです。
自宅や住んでいる地域が特定できる写真もあり、さらには小学校入学の記念写真も含まれていたといいます。
ネットで娘のプライバシーが公開されてしまったことで、「事件に巻き込まれたりするのでは」と女性は不安を抱くようになりました。
女性は夫とともに義父母へSNSの危険性を説明して、穏やかに削除を求めたそうですが、逆に責められ、家族間の関係はぎくしゃく。
義母はいったんアカウントを削除したものの、ほどなく新たなSNSを始めており、「また娘の写真を晒されるのでは」と女性は気が休まりません。
このような義母の行為は「不法行為」にあたるのでしょうか。松本典子弁護士に聞きました。
非正規の待遇格差、「正社員だから優遇」はもう終わり…正当性がなければ違法に
正社員と非正社員の待遇格差をめぐる2つの訴訟の判決が6月1日、最高裁第2小法廷(山本庸幸裁判長)で言い渡され、労働契約法20条が禁じる不合理な格差についての初判断が示された。
ハマキョウレックス事件では一部の手当について正社員との格差が違法と認定された一方、定年後に再雇用された非正社員(形式上は有期契約)が起こした訴訟(長澤運輸事件)では基本給や多くの手当の格差が不合理とは言えないと判断された。
今回の最高裁判決をどう見ればいいのか。企業や労働者にどのような影響を及ぼす可能性があるのか。労働者側の立場から労働事件を広く手がける河村健夫弁護士に聞いた。
重度知的障害者の事故死「逸失利益ゼロ」提示…命の価値、どう考えるべきか?
重度の知的障害を持っていた松澤和真さん(当時15歳)が、入所していた施設から行方不明になり、死亡した事故をめぐって、両親が施設の運営法人に約8800万円の損害賠償を求めて、裁判を起こしている。争点は、請求金額のうち約5000万円を占める「逸失利益」(将来稼いだと予想される収入)がどこまで認められるかだ。
事前の賠償交渉で、施設側は過失を認め、慰謝料として2000万円を提示した。しかし、逸失利益はゼロとしていたため、両親が裁判に踏み切った。
両親の代理人によると、重度の知的障害者の逸失利益は長らく認められてこなかった。近年、認められる裁判例も出てきたが、金額は「最低賃金」や「障害年金」が基準だ。
一方、今回両親が求めているのは、障害のない同い年の男子が亡くなった場合と同じ扱い。具体的には、日本人男性の平均年収(約540万円)を基準に計算して欲しいという。両親らは「(逸失利益の多寡による)命の差別を是正したい」と話している。
重度の知的障害者の逸失利益をめぐっては、これまでどのような判決や議論があったのだろうか。障害者の差別問題にくわしい岩月浩二弁護士に聞いた。
中国の反日デモで被害を受けた現地日系企業は補償を求めることができるか
日本政府の尖閣諸島の国有化をきっかけに拡大した中国での反日デモの影響で、現地日系企業の工場の操業停止や小売店の臨時休業が相次いでいる。
中には山東省にあるパナソニックの工場やイオングループのスーパー「ジャスコ」のように、一部の暴徒化したデモ隊に襲撃されるなど破壊行為の対象となってしまった設備や店舗もあり、また上海にあるユニクロではデモ隊による襲撃を恐れたためか、店員が独断で「尖閣諸島は中国の領土」と書かれた張り紙を掲示したことで物議を醸すなど、大きな混乱が続いている状況だ。
そもそも尖閣諸島の国有化は政治・外交問題であり、現地日系企業にデモ隊の矛先が向くのは全くの筋違いといえる。まして破壊行為など言語道断であり、現地日系企業は完全な被害者であることは明白だ。
野田首相はこれらの被害について中国政府側に損害賠償を請求する考えを示したが、各企業の立場からは何かしらの補償を求めることができるのだろうか。堀晴美弁護士に聞いた。
●破壊行為を行なった人物を特定することが難しく、損害賠償請求は不可能か
「デモ隊による破壊行為はいわゆる不法行為ですから、本来、損害賠償請求は破壊行為を行ったデモ隊の人物に対して請求することになります。ただ、現実問題として、破壊行為を行った人物を特定することは容易ではありません。」
「今回、北京大使館に対するデモ行為で身柄を拘束された例がありますが、そのような場合は身柄を拘束された人物に対して、北京大使館の破壊について損害賠償を請求することになりますが、これも現実的にはあまり期待できません。また、日系企業の破壊行為については身柄の拘束もされていませんから、特定の人物に対して、不法行為による損害賠償請求をすることは事実上不可能です。」
●法律上では難しくとも、政治判断による損害賠償は有り得る
「では、中国政府、行政機関に対して損害賠償請求をできるかという問題になりますが、中国政府、行政機関がデモ行為、破壊行為を容認、推奨したという確たる証拠がない限り、中国政府、行政機関に不法行為による損害賠償請求を求めることは難しいと思います。」
「ただこれはあくまで法律レベルの問題で、政治的レベルで、損害賠償をするということは可能です。今回も、中国政府は被害を受けた企業に対して損害賠償をするということを示唆したという報道がありましたが、これも、あくまで政治的レベルでの判断です。」
●日本政府に対しての損害賠償請求は難しい
「また、本来日本政府は海外に在住する日本人を保護する義務がありますから、日系企業に対する破壊行為を防げなかったということで日本政府に対して損害賠償を請求するということも考えられますが、やはり第一にはまず中国政府が損害賠償の責任を負うべきだと考えます。日本政府に対して請求しても、今回の状況では、個々の日系企業の損害賠償までは負えないという判断がなされると思います。」
●尖閣諸島の国有化の引き金をひいた石原都知事および東京都の関係は
日本国内の一部では、尖閣諸島の国有化は東京都の石原都知事が引き金をひいたことであり、被害を受けた現地日系企業は石原都知事または東京都に補償を求めるべきだという意見があるようだが、そのようなことは現実的に可能なのか。
「確かに、今回の一連の騒動は、石原都知事の尖閣諸島取得をめぐる話が引き金となって国有化され、反日デモにつながりましたが、前述のように今回の破壊行為は不法行為として本来破壊行為を行った人物に対して損害賠償を求めることができるだけで、あとは政治レベルで、中国政府、あるいは日本政府が補償することを期待するしかありません。石原都知事の行為は引き金となったに過ぎず、破壊行為との因果関係は希薄で、石原都知事、東京都に対して損害賠償を求めることは難しいと言えるでしょう。」
●被害の補償は日中両政府の政治判断に
中国公安当局は反日デモを禁止し、完全阻止する方針を決めたという報道もあるが、まだ現地日系企業が受けた被害についてどう補償されるのかは明らかになっていない。
堀弁護士の解説の通り、現地日系企業が被害について損害賠償請求を行なうことが現実的に難しいのであれば、被害の補償は日中両政府の政治判断に委ねられることになる。日本国内でも中国側に対する反感が高まっており、適切な補償を含め事態の早期沈静化を図れるか、日本政府の外交力が問われる局面といえそうだ。