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隠れた労働時間、発注者の無理な納期設定…4つの労災事例にみる「過労死問題」
2016年11月10日 10時01分

厚労省主催の「過労死等防止対策推進シンポジウム」が11月9日、東京・千代田区で開かれ、過労死問題にくわしい川人博弁護士が、今年労災が認定された4つの事例を挙げ、過労死防止対策の強化を訴えた。

厚労省主催の「過労死等防止対策推進シンポジウム」が11月9日、東京・千代田区で開かれ、過労死問題にくわしい川人博弁護士が、今年労災が認定された4つの事例を挙げ、過労死防止対策の強化を訴えた。

●海外勤務者の過労死防止が急務

1つ目の事例は、海外勤務者の過労死。東京営業所に籍を置き、上海で働いていた男性が、100時間を超える時間外労働などにより、心筋梗塞で2010年に突然死。今年7月、中央労基署に労災認定された。

川人弁護士によると、2008年から2013年の6年間に上海では247人が死亡しており、うち35%が突然死、8%が自殺だった。グローバル化により、海外駐在員が増えているが、海外は国内に比べ、大気汚染や地域特有の治安問題などがあり、心身の健康を害する要因が多い。

川人弁護士は「日本の各企業において海外勤務者の過労死を防止することに真剣に取り組むべき段階に入っている」と話した。

●休憩時間も休めない「隠れた労働時間」

2つ目は、2012年に脳内出血を発症し、現在も寝たきりの療養生活を送っている警備員の事例だ。池袋労基署は労災と認定しなかったが、東京地裁が労災と認定した。

裁判では、労働時間の長さが争点になったが、休憩時間とされている時間でも常に無線機を携帯していたことなどを理由に、労災が認められた。

川人弁護士は、この事例のように、休憩とされている時間でも休めない労働者が多いとして、「隠された労働時間が過労死、過労自殺の原因になっている」と話した。

●発注者側の「無理な納期設定」が過重労働を生む

3つ目は、課長代理として働いていた建設コンサルティング社員の事例。この社員は長時間労働や長距離出張などのストレスから、くも膜下出血を発症し、2015年に亡くなった。「管理監督者」として扱われていたため、残業代も適正に支払われていなかった。

しかし、渋谷労基署が2016年7月に労災を認定。労働実態などに照らして、管理監督者には該当しないとの判断も下した。いわゆる「名ばかり管理職」の事案だ。

川人弁護士は、安易に管理監督者にしてしまうことを批判。その一方で、長時間残業が生まれる背景として、「発注者側が、受注者側の労働実態を考慮しないで、無理な納期設定を行なっている疑いがある」と述べ、商慣行や発注者側にも課題があるとした。

●「残業の自主申告制」は過重労働を隠す

最後は、電通入社1年目の高橋まつりさん(当時24歳)の事案だ。高橋さんは、長時間労働に加え、上司からのパワハラやセクハラにも悩まされていたという。川人弁護士は、高橋さんが亡くなった原因として、以下の3つを挙げた。

・極度の労働による過労と睡眠障害

・上司による適切な労務管理が行われず、パワハラとも言える言動があったこと

・会社全体として労務管理システムが機能していなかったこと

高橋さんは月100時間以上の時間外労働をしていたと見られるが、会社に申告した残業時間は「36協定」の限度である月70時間以内だった。川人弁護士は、残業の「自主申告制」は、「過重労働を生み出す機能、ないしは隠す機能がある」と批判した。

講演の締めくくりとして、川人弁護士は、過労死が起きている職場では、同時に粉飾決算などの業務不正が行われていることが多いとして、「働く者の健康なくしては、健全な経営はない」と話した。

(弁護士ドットコムニュース)

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