9017.jpg
大阪市、運動会の「ピラミッド」全面禁止 「自治体の判断として妥当」と弁護士
2016年02月17日 10時29分

骨折などの事故が相次いでいる運動会の「組体操」をめぐって、大阪市教育委員会は2月9日、市立小中高校で実施する「ピラミッド」や「タワー」を新年度から禁止する方針を決めた。

報道によると、市教委は2015年9月、子どもたちが四つん這いになって重なる「ピラミッド」の高さは5段に、肩の上などに立って塔をつくる「タワー」は3段に制限する方針を決めた。しかし、制限後も骨折事故が起きていた。

このため、市教委は9日の会議で、特に危険性が高いとして「ピラミッド」と「タワー」を市立学校で行うことを禁止すると決め、組体操のほかの技も認めるべきか検討することになった。文部科学省によると、自治体が「ピラミッド」「タワー」を全面禁止するのは全国でも初めてだという。

組体操をめぐっては、相次ぐ事故に保護者や教師から疑問視する声が出ている一方で、「団結力」を育むなどの教育的効果を指摘する声もあるなど、実施の是非を問う議論が続いている。今回、大阪市が全面禁止に踏み切ったことについて、どう評価すればいいのか。多田猛弁護士に聞いた。

骨折などの事故が相次いでいる運動会の「組体操」をめぐって、大阪市教育委員会は2月9日、市立小中高校で実施する「ピラミッド」や「タワー」を新年度から禁止する方針を決めた。

報道によると、市教委は2015年9月、子どもたちが四つん這いになって重なる「ピラミッド」の高さは5段に、肩の上などに立って塔をつくる「タワー」は3段に制限する方針を決めた。しかし、制限後も骨折事故が起きていた。

このため、市教委は9日の会議で、特に危険性が高いとして「ピラミッド」と「タワー」を市立学校で行うことを禁止すると決め、組体操のほかの技も認めるべきか検討することになった。文部科学省によると、自治体が「ピラミッド」「タワー」を全面禁止するのは全国でも初めてだという。

組体操をめぐっては、相次ぐ事故に保護者や教師から疑問視する声が出ている一方で、「団結力」を育むなどの教育的効果を指摘する声もあるなど、実施の是非を問う議論が続いている。今回、大阪市が全面禁止に踏み切ったことについて、どう評価すればいいのか。多田猛弁護士に聞いた。

●全面禁止の措置をとったことは妥当

私が2014年11月に弁護士ドットコムニュースの取材に応じた記事(「人間ピラミッド崩壊で「1億円賠償」判決もーー弁護士が指摘する「組体操」のリスク」https://www.bengo4.com/other/1146/1307/n_2232/)では、人間ピラミッドについて、どちらかと言えば否定的なコメントをさせていただきました。また、指導教諭らの責任が認められ、学校の設置者に対して、1億円を超える賠償が命じられた事例も紹介しました。

このように組体操に関する事故が相次いでおり、社会的にも批判が大きくなっている現状からすれば、今後、組体操で人間ピラミッドやタワーなどを行う場合、学校側の注意義務は、より増すことになるでしょう。「それほど危険なものだとは認識していなかった」という弁解は学校として通らなくなります。

したがって、子どもの安全を守る観点、同時に学校に過度な責任や負担をかけない観点からも、自治体として、全面禁止の措置をとったことは、妥当だと言えます。

●団結を高める教育手法は他にあるはず

一方で、「低い段数でも一律に規制するのはやり過ぎだ」との指摘もあり、その言い分も十分に理解はできます。もっとも、低い段数でも事故によって児童・生徒が重傷を負った報告事例もあります。文部科学省は、事故防止に向けたガイドラインを示す方針を明らかにしていますが、大阪市の対応を機に、組体操の必要性について、改めて議論すべきときではないでしょうか。

組体操を実施する趣旨が「団結」や「達成感」にあるというのであれば、何もこのようなリスクの高い方法をとらなくても、団結を高めるプログラムや教育手法は他にあるはずです。また、「保護者が感動するから」という理由も論拠が希薄です。親のための教育なのではなく、子どものための教育であらねばなりません。

「組体操をやりたい」と思う児童・生徒が多いのに禁止するのであれば、心苦しい部分もあります。しかし、それでも子どもたちの安心・安全を守るのが、大人の役目だと思います。

もちろん、この流れが「何でも危険なものはやめろ」という風潮に傾き過ぎるのもいけません。サッカー、野球、バスケットボール、マラソン、マットでの体操、などなど、危険がゼロのスポーツなどありえません。むしろ、そういう危険の可能性があるものを、いかに安全に楽しむかを学ばせるのも教育です。

ただ、今回の組体操の問題については、事故の報告件数、その重症度、理科系の学者からの理論面での危険性の指摘など、多くの要素を考えると危険性が高いわけで、そこから得られる利益と比較して検討した場合、危険度の高い競技を続ける必要性は高くないというのが、私の意見です。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る