5576.jpg
小渕優子氏本人の「法的責任」はどうなるのか――資金管理団体の「架空寄付」疑惑
2015年04月28日 13時27分

小渕優子・前経済産業大臣の関連政治団体が東京で開いた「観劇会」をめぐる政治資金規正法違反事件の捜査が、大詰めを迎えている。

読売新聞の報道によると、東京地検特捜部の調べに対し、元秘書の折田謙一郎・前群馬県中之条町長が「各団体の簿外支出を穴埋めするため、観劇会の収支を操作するなどして虚偽記入した」と供述しているという。東京地検特捜部は、政治資金規正法違反として、折田氏を在宅起訴する見通しとのことだ。

小渕氏の関連政治団体では、選挙の陣中見舞いなどを「簿外」で支出していた。会計を担当していた折田氏はそのずれを解消するため、小渕氏が代表をつとめる資金管理団体「未来産業研究会」(東京)が、関連政治団体の「小渕優子後援会」と「自民党群馬県第5選挙区支部」に寄付をしたように装ったと、関係者はみているようだ。

報道によると、2009年から13年までの5年間で、未来産業研究会から関連団体への寄付は5600万円あったが、この大半が「架空」だったと見られている。

読売新聞は「小渕氏は不起訴になるとみられる」としている。だが、仮に報じられているとおり収支報告書に「虚偽記載」があったとしたら、衆院議員である小渕氏自身も、何らかの法的責任を問われる可能性はないのだろうか。秋山直人弁護士に聞いた。

小渕優子・前経済産業大臣の関連政治団体が東京で開いた「観劇会」をめぐる政治資金規正法違反事件の捜査が、大詰めを迎えている。

読売新聞の報道によると、東京地検特捜部の調べに対し、元秘書の折田謙一郎・前群馬県中之条町長が「各団体の簿外支出を穴埋めするため、観劇会の収支を操作するなどして虚偽記入した」と供述しているという。東京地検特捜部は、政治資金規正法違反として、折田氏を在宅起訴する見通しとのことだ。

小渕氏の関連政治団体では、選挙の陣中見舞いなどを「簿外」で支出していた。会計を担当していた折田氏はそのずれを解消するため、小渕氏が代表をつとめる資金管理団体「未来産業研究会」(東京)が、関連政治団体の「小渕優子後援会」と「自民党群馬県第5選挙区支部」に寄付をしたように装ったと、関係者はみているようだ。

報道によると、2009年から13年までの5年間で、未来産業研究会から関連団体への寄付は5600万円あったが、この大半が「架空」だったと見られている。

読売新聞は「小渕氏は不起訴になるとみられる」としている。だが、仮に報じられているとおり収支報告書に「虚偽記載」があったとしたら、衆院議員である小渕氏自身も、何らかの法的責任を問われる可能性はないのだろうか。秋山直人弁護士に聞いた。

●まず問われるのは、虚偽記入者と会計責任者の責任

「資金管理団体(政治団体の一種)の収支報告書に虚偽記載があった場合、第一に法的責任を問われるのは、虚偽記載をした人物や、その団体の『会計責任者』です。

報道によれば、『未来産業研究会』の会計責任者は、折田氏とは別の人物で、虚偽記載をした疑いは、主として折田氏にかけられているようです。

仮に虚偽記載があった場合、虚偽記載をした人物は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金、もしくはその両方を受けることになります。

その場合、公民権が一定期間停止されます。公民権停止とは、選挙権や被選挙権が一定期間なくなるということです(※1)

また、会計責任者以外の者が虚偽記載を行った場合でも、会計責任者に故意または重大な過失があるときは、会計責任者も同様の罰則規定の適用を受けます(※2)」

●資金管理団体「代表者」の責任は?

そうなると、小渕氏本人の責任はどうだろうか? 小渕氏は、資金管理団体「未来産業研究会」の代表者という立場だが・・・。

「資金管理団体の『代表者』も、会計責任者の選任および監督について相当の注意を怠ったときは、『50万円以下の罰金』に処するとされています。

その場合、同様に一定期間の公民権停止の制裁があります(※3)。

現職の国会議員が公民権停止になれば、議員の身分を失ううえ、一定期間、選挙に出られなくなります。これは政治家にとって極めて重い制裁です」

●立証が難しい

代表者が「相当の注意を怠った」といえるのは、どういうケースだろうか?

「『選任および監督について相当の注意を怠った』とは、代表者が会計責任者を選任する際に、通常期待される程度の人柄・能力等の調査を行わず、さらに選任後も通常期待される程度の業務の監督を行わなかった、という場合だとされています。

これは抽象的で、検察官の立場からすると、現実的には立証するのがなかなか難しいのではないかと思います。

特に、選任後に業務の監督を行わなかったことについて立証できたとしても、選任時に人柄・能力等の調査がずさんでいいかげんな人を選んでしまったと立証するのは、かなり難しいのではないかと思います」

検察の立場からすると、その両方を立証しなければならないわけだ。そうすると・・・。

「仮に、小渕氏が代表をつとめる資金管理団体『未来産業研究会』の収支報告書に虚偽の記載があったことが判明したとしても、ただちに小渕氏の刑事責任に結びつくかというと、まだ分からないというほかないと思います。

なお、観劇会の収支を操作した収支報告書の虚偽記載の問題ということであれば、不当に安い価格で有権者を観劇会に招待したという公職選挙法上の『買収』の問題ではないことになります。

そうなると、仮に折田氏の有罪が決まっても、小渕氏が連座制によって公民権を停止され、失職することは免れることになります」

秋山弁護士はこのように指摘していた。

(※1)政治資金規正法25条1項3号、28条参照。

(※2)政治資金規正法25条1項3号、27条2項、28条参照。

(※3)政治資金規正法25条2項、同法28条参照。なお、失職について国会法109条参照。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る