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「パロディーTシャツ」販売で店長ら逮捕…弁護士「権力の介入、萎縮効果が大きい」
2016年10月29日 10時30分

有名ブランドのロゴをもじった「パロディーTシャツ」は今後、日本で売られなくなるのだろうか。大阪市の繁華街・ミナミにあるTシャツなどの販売店に、大阪府警の捜査員が10月26日、商標法違反の疑いで一斉捜索に入り、店長ら13人を逮捕した。

報道によれば、ナイキに似せたロゴマークに「NICE」「NAMAIKI」と書かれたTシャツなどが、1枚3000円程度で売られていた。若者や観光客らから人気を博していたという。

パロディー商品は、本物と見間違うほど巧妙に真似られたコピー商品とは異なるはずだが、今回、なぜ逮捕にまで至ったのか。警察の対応を弁護士はどのように評価するのか。冨宅恵弁護士に聞いた。

有名ブランドのロゴをもじった「パロディーTシャツ」は今後、日本で売られなくなるのだろうか。大阪市の繁華街・ミナミにあるTシャツなどの販売店に、大阪府警の捜査員が10月26日、商標法違反の疑いで一斉捜索に入り、店長ら13人を逮捕した。

報道によれば、ナイキに似せたロゴマークに「NICE」「NAMAIKI」と書かれたTシャツなどが、1枚3000円程度で売られていた。若者や観光客らから人気を博していたという。

パロディー商品は、本物と見間違うほど巧妙に真似られたコピー商品とは異なるはずだが、今回、なぜ逮捕にまで至ったのか。警察の対応を弁護士はどのように評価するのか。冨宅恵弁護士に聞いた。

●商標が果たす役割は?

「パロディー」には、パロディー漫画やパロディー音楽などの著作権に関する問題と、今回のように登録されている著名な名称やロゴなどの商標権に関する問題とがあります。

商標権が問題となる名称やロゴに関するパロディーについては、「本物」と明らかに区別することができるので、問題ないだろうと考えがちです。このような考え方は、商標が自らの商品と他人商品とを区別するもの(「自他商品識別機」)としてのみ存在するという理解が前提になっているのですが、商標が果たす役割は、「自他商品識別機能」に限りません。

商標は、繰り返し使用されることによって認知されるようになります。一定程度の認知度を獲得した商標については、その商標を見ると、誰が提供している商品であるか判断できるようになります。このような商標は「出所表示機能」を備えた商標ということになります。

他方で、特定の商標が付された商品が繰り返し販売されることで、「この商標が付された商品については、このような品質を備えた商品である」と判断できるようになります。これを商標の「品質保証機能」といいます。

さらに、商標の認識度が高まると、特定の商標が付されていることで商品が売れるという状態になり、このような商標は、「宣伝広告機能」を備えた商標ということになります。

ブランド品を例にすると、ブランド品のロゴマークなどは、単に他の商品と区別するだけの役割ではありません。どこのブランドであるか判断でき、ロゴマークの存在により高い品質も保証されていますし、特定のロゴマークの存在により売れているという側面もあります。

つまり、ブランド品のロゴマークは、「自他商品識別機能」、「出所表示機能」、「品質保証機能」、「宣伝・広告機能」を備えているわけです。そのため、「商標権を侵害する」行為とは、商標が有する機能を損なう、流用することを意味しますので、「本物と区別できるから商標権侵害にはならない」との考え方は誤りなのです。

●何が問題だった?

今回、摘発されたブランド商標のパロディー商品は、「自他商品識別機能」、「出所表示機能」、「品質保証機能」、「宣伝・広告機能」の4つの機能を損ねている可能性があります。

パロディー商品は、特定の商標が有する「宣伝・広告機能」を無断で使用しており、ブランドイメージを損ねているものも散見されることから、「宣伝・広告機能」を損ねているとも言えます。

また、パロディー商品が本物と比較して非常に安価で販売されていたことを考慮すると、ブランド商標が備えている「品質保証機能」を損ねている可能性も十分にあります。さらに、一見すると本物の商標と見誤るものも存在し、「自他商品識別機能」、「出所表示機能」を損ねている商品も存在します。

摘発対象となった店には、このような他人の商標権を侵害する商品が販売されていたと評価できる商品が多数存在していたようです。しかし、いきなり警察の捜査が入り、身柄を拘束した対応には非常に違和感を覚えます。

●「民事裁判で十分な議論が行われるべきだった」

故意に他人の商標権を侵害する行為は、商標法によって刑事罰の対象とされており、本物と区別ができない商品が販売されている場合に警察権力が介入することは理解できます。

しかし、商標のパロディーに対して警察権力が介入することは、許される行為と許されない行為との線引きについて裁判所で議論されることなく、抽象的に「商標のパロディを行うと逮捕される」という印象だけが強く残り、周囲に与える委縮効果があまりにも大きすぎると思います。

今年4月には、著名な時計メーカーであるフランクミュラーのパロディーである「フランク三浦」の商標登録が、知的財産高等裁判所において認められています(フランク・ミュラー側は上告)。今回の件についても、民事上の問題として、裁判所で十分な議論が行われるべきであったと考えています。

(弁護士ドットコムニュース)

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