12917.jpg
電通、ヤマト、エイベックス…未払い残業代の支給続々、税金負担が重くなる可能性は?
2017年12月25日 09時58分

広告大手の電通が、従業員に2年分の未払い残業代として総額約24億円を12月中に支払うことになった。これまで「自己研鑽」として残業の対象外になることもあった、社内での資料チェックや語学学習などの時間について、社員の自己申告に基づき、残業代を支払うという。

電通以外にも今年は、ヤマトホールディングスが約5万9000人に総額約230億円、エイベックス・グループ・ホールディングスが約1500人に約7億円と、各業界の大手が未払い残業代を支払うケースが複数見られる。

ところで、未払い残業代は本来、その時々にもらえたはずのもの。まとめて支給された場合、本来よりも余計に税金を支払う事態は出てこないのだろうか。松本佳之税理士に聞いた。

広告大手の電通が、従業員に2年分の未払い残業代として総額約24億円を12月中に支払うことになった。これまで「自己研鑽」として残業の対象外になることもあった、社内での資料チェックや語学学習などの時間について、社員の自己申告に基づき、残業代を支払うという。

電通以外にも今年は、ヤマトホールディングスが約5万9000人に総額約230億円、エイベックス・グループ・ホールディングスが約1500人に約7億円と、各業界の大手が未払い残業代を支払うケースが複数見られる。

ところで、未払い残業代は本来、その時々にもらえたはずのもの。まとめて支給された場合、本来よりも余計に税金を支払う事態は出てこないのだろうか。松本佳之税理士に聞いた。

●「後払い給与」か、「一時金」かで税額が変わってくる

――未払い残業代は税制上、どういう扱いになる?

支払われる名目によって取扱いが変わります。

過去分の未払い残業代の精算を受けた従業員は、本来の残業手当が支払われるべきであった各支給日の属する年分の給与所得となります(後払い給与)。

未払い残業代の代わりに「一時金」を受け取ったときは賞与と同じ扱いとなり、一時金を受け取った年の給与所得となります。

――本来の年分の給与所得になる場合は、税金を納め直すの?

会社がさかのぼって源泉徴収をして、年末調整をやり直します。その場合、給与を受け取る側は、未払い残業代から追加の源泉徴収税額が差し引かれた額の支給を受けることになりますので、特に何もする必要はありません。住民税の金額も変わってくるので、その後に支給される給与で自動的に調整されることになるでしょう。ただし、確定申告をしている場合は、修正申告などをする必要があります。

――従業員にとって、各月分としてもらうのと、一時金としてもらうの、どっちがお得?

一時金として受け取った場合は、受け取った年の所得となります。所得税率は、所得が高いほど高率に設定されているため、一度に多く受け取る方が税金は高くなる可能性があります。つまり、税制上だけをみると、給料としてもらう方がお得となります。

たとえば、もともと360万円の給与を受け取っていた場合、所得税は9万8500円です(基礎控除のみを想定)。この方に年間100万円の未払い残業代が2年分あったとします。

後払い給与として受け取り、各年の給与が460万円となった場合の所得税は17万8500円で、2年間で35万7000円となります。

一方、1年目は360万円のままで、2年目に一時金として200万円を受け取ったときは、2年目の給与は560万円となり、所得税は28万4500円です。1年目と合わせると38万3000円になり、後払い給与として受け取ったときと比べて、所得税が2万6000円多くなります。

しかし、税金以外にも社会保険にも影響を与えますし、会社の方針もあるでしょうから、会社の方針に沿って適切な未払い残業代が精算されればよし、とすべきではないでしょうか。

――ところで、未払い残業代を支給した場合、法人税の扱いも従業員のようにどちらか選べるの?

会社は、過去の未払い残業代を支給したとしても、過去の決算を修正するのではなく、支給した期に、費用に計上します。法人税の計算においては、債務確定主義といって、その期に確定していた債務となるもののみが損金(費用)に計上できることとされているためです。

【取材協力税理士】

松本佳之税理士

税理士・公認会計士。みんなの会計事務所(大阪市)代表。「税理士のノウハウを会社成長の力に」をモットーに、大阪で起業支援、中小・ベンチャー企業の支援や税務の他、個人確定申告、相続・相続対策等の税務業務を手掛ける。

事務所名 :みんなの会計事務所

事務所URL:http://www.office-kitahama.jp/

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る