11378.jpg
長時間労働の抜け道「36協定」見直しへ、弁護士「法律に労働時間の上限明記も必要」
2016年09月21日 10時12分

政府は、長時間労働の抑制など働き方改革の実現に向け、「働き方改革実現会議」を設置し、本格的な議論を始めた。9月7日には、労働者に事実上無制限の残業を課すことができる労働基準法の「36協定」の運用を見直し、1ヶ月の残業時間に上限を設定する検討に入ったことが報じられた。

36協定を結んだ場合には、現行法でも、残業の上限を「1ヶ月45時間」と定めている。しかし、実際は例外規定に基づき、労使の合意があれば上限は守らなくていい。報道によれば、上限を超える残業を原則禁止とし、違反した場合の罰則規定を設けることなどの具体策を練る。

36協定の運用見直しや、罰則規定の新設で残業規制は強化できるのだろうか。実現に向けた課題について、今泉義竜弁護士に話を聞いた。

政府は、長時間労働の抑制など働き方改革の実現に向け、「働き方改革実現会議」を設置し、本格的な議論を始めた。9月7日には、労働者に事実上無制限の残業を課すことができる労働基準法の「36協定」の運用を見直し、1ヶ月の残業時間に上限を設定する検討に入ったことが報じられた。

36協定を結んだ場合には、現行法でも、残業の上限を「1ヶ月45時間」と定めている。しかし、実際は例外規定に基づき、労使の合意があれば上限は守らなくていい。報道によれば、上限を超える残業を原則禁止とし、違反した場合の罰則規定を設けることなどの具体策を練る。

36協定の運用見直しや、罰則規定の新設で残業規制は強化できるのだろうか。実現に向けた課題について、今泉義竜弁護士に話を聞いた。

●「インターバル規制や労基監督官の増員・権限強化も」

「36協定を締結していても、実際には特別条項により過労死ラインである月80時間以上の残業も合法とされている現状があります。そうした運用の抜け道をふさぎ、36協定の上限を定め罰則規定を設けるということであれば、それは有効な手段の一つだと思います。速やかに実行すべきです」

しかし、今泉弁護士は「それだけでは不十分です」とも指摘した。

「現在、残業時間の上限は厚労大臣の定める『限度基準告示』によって規制されていますが、労働基準法自体に残業も含む総労働時間の上限を明記すべきです。

また、日本には勤務終了時刻から次の勤務開始時刻までの休息時間についての規制(「インターバル規制」)がありません。休憩が取れないままの連続勤務をなくすために、勤務明けから次の出勤まで11時間は空けなければいけないなどとする『インターバル規制』も新設する必要があります。

さらに、人手が全く足りていない労基監督官の増員・権限強化も合わせて必要でしょう」

●「ホワイトカラー・エグゼンプション」は撤回すべき

この他に、長時間労働抑制のために必要なことはあるのだろうか。

「すでに、野党4党が、労働時間延長の上限やインターバル規制などを盛り込んだ『長時間労働規制法案』を提出しています。これを速やかに審議して、実効性ある労働時間規制を実現することが政治の役割です。

一方、政府の提出している労働基準法改正案は、裁量労働制の対象を大幅に拡大するものです。また、『高度プロフェッショナル制度』(ホワイトカラー・エグゼンプション)の導入により、広範な労働者について残業代をゼロとするとともに、労働時間規制自体をなくしてしまうという恐るべき内容も含まれており、『過労死促進法』とも言われています。

長時間労働の是正と逆行するこの法案は、速やかに撤回すべきでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る