犯罪・刑事事件の解決事例
#自己破産

(会社法人破産 その1)会社を畳むということが怖くて決断できませんでした。シラケる従業員を尻目に金策に走りまわったのがバカみたいです。会社の破産って大変ですが、踏ん切りがつきました。【事務所法人案件】

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小澤 和彦 弁護士が解決
所属事務所弁護士法人後藤東京多摩本川越法律事務所練馬事務所
所在地東京都 練馬区

この事例の依頼主

男性

相談前の状況

前の会社を退職して独りして会社を立ち上げて15年間。調子がいいときは、年商も億越えで、私の役員報酬も高めに設定して、それでも余剰があるので、マンションを購入して、車も高級車に買い替えるなど、本当にいい時でした。さらに、自分も贅沢させてもらいましたが、社員たちにも特別ボーナスを支給したり、ベースアップしてやったり、社員旅行で家族も呼んでいいという事で海外にもいきました。ですので、私だけでなく、いい時は、皆でその恩恵を受けました。しかし、いいことは続かない、と他の会社の社長さんから聞いてはいましたが、その通りになりました。売り上げが減り始めした。社員たちが変わってしまったのです。まず、営業が、「こんな面倒な仕事は受けない方が会社のためだ」「今は、手が空いてないので丁寧な仕事ができないので断った方がいい」「あの会社は本当に支払いをきちんとしてくれるのか分からないから受けないようにしよう」などなど、様々な理由をつけて仕事を断るようになってしまったのです。当然、社員の手持ち案件は少なくなりますが、売り上げは減ります。そこで、社員旅行は中止にすると告げても、別に、何の変化もなかったので、ボーナスを前期は支払わない、と告げたところ、「一生懸命にやっているのにボーナスも出ないんだったら、もう仕事したくないです」「売り上げがどうとかは関係ない。社長の給与を減らすのがまず筋ですよね?」などと、急に、一致団結し始めました。しかも、役員であるはずなのに、専務までもが、「賞与は儲かったから出すもんではなくて苦しい時にこそ社員を鼓舞するために無理をしてでも支払うもんだ」などと従業員側に立った無責任なことを言い出しました。「売り上げが減ったのにどこから出すんだ!」というと、「運転資金に困ったときはリストラではなくまずは金策ですよ。」「銀行回りしてから言うのが普通でしょ。」など言い出して、しかも、信じられないことに、その専務が勝手に、信用金庫に融資の打診までしているのです。「だけど、連帯保証人は俺がなるんだそ!」と言っても、「それは社長だから当然ですよね?」「会社を私に譲るというのであれば、私は喜んで社員たちのために保証人でもなんでもなりますよ。」というではありませんか。ただ、社内が私1人対残り全員という図式になってしまったので、私も業務を継続するために致し方なく、借り入れをすることにしました。ですが、年を重ねるほどに右肩下がりで、どんどん借入額は増えていきました。しかも、借り入れをするために、無理な黒字決算をしていたため、税金の負担もとても重くて、毎月、口座の残高を確認しては、吐きそうになっていました。最後の方は、いよいよ、通常の借り入れが難しくなり、私の個人の保険を解約したり、個人のカードでキャッシングをするようになってしまいました。そして、それすらできなくなった時に、一晩考えて、全社員に言いました。「専務は君たちのために保証人でもなんでもなると言っているし、君らも専務がいいんだろ?」「会社譲るから、この借金は専務と君たちとで考えてくれ。」というと専務から電話がかかってきて、「そんなのできるわけないでしょ?」「辞任届を送るんで取締役から外しておいてね。」と一方的な通告。しかも、翌日、翌々日と、続々と社員全員から退職届が届けられました。

解決への流れ

最初は、もう、どうしたら分からなくて、会社の社労士に相談しました。しかし、社労士は、「退職届が出たのであれば、離職票の発行をした方がいいのかどうか、社長から社員の方に聞いてもらえますか?」と、とんちんかんなことを言うので、「いや、そうではなくて、社員、全員から退職届が出てるんだけど。」と切迫感を持ってもらおうとしたのですが、「はあ。」「誰か次に採用されるのですか?」など、全く会社の存続ができなくなっていることが分かっていない反応なので、「じゃあ、あんたの事務所で、全員が退職届を出して来たら、『はあ』とか『離職票が・・・』とか言うのか?反応がおかしいだろ!」と初めて怒鳴りつけました。しかし、「そんなこと言われても私は社会保険の手続きをするだけで・・・。」とそんな感じなので、即日、委託解除しました。次に、税理士に相談すると、「それは、一種の会社破壊行為ですね。とにかく、弁護士に相談した方がいい。」「どなたか知り合いがいますか?いなければ受けてくれるかどうかは分かりませんが紹介ぐらいはできると思いますよ。」と言われました。ただ、その時点では、弁護士に知り合いがいないこともなかったので、自分で相談してみると言いました。私の知り合いというか、以前、会社の請け負い代金のトラブルで依頼した弁護士がいたので、そんなに親しいという訳ではなかったのですが、相談してみることにしました。私は、会社をここまでにした社員や専務を訴えたい、と相談したところ、「従業員全員に損害賠償請求ですか?」「その前に、落ち着いて考えてもらいたのですが、これからどうする気ですか?」「返済もリスケして利息だけの支払にしてもらっていますが、それすら支払えていないですよね?」「しかも、そんな社員や取締役はいなくなった方がいいに決まってますが、その場合には、今の仕事はまた人をとって続けるんですか?」「何人いたら続けられるんですか?」「おそらく、この社員たちは、まともに引継ぎなんかしないですよ。」「なんで放置してたんですか?」「客観的に見て、これは倒産状態ですよ。」と畳み込むように言われてしまい、ようやく気付きました。「会社倒産」自分の立ち位置は、倒産した会社の社長だということです。「今からの方向性としては2つ。」「1つは、もし、債務がなければ黒字で回る事業があるというのであれば、支援企業を探して、私的再建策を立てる。ただし、こんな債務超過の会社をそのまま引き受ける企業があるとはちょっと考えにくいです。これなら、破産なり民事再生で債務を整理してからでないと引き受けたくない、と考えるでしょう。そう、そして、もう一つが破産ないし民事再生です。」とうとう、恐れていた「破産」とか「民事再生」という言葉が出てきてしまいました。「破産」という言葉は特に、衝撃でした。ただ、「民事再生」という言葉は、よくニュースでは聞くのですが、実際に、どのような内容なのかは深く考えたこともなく、しかも、「再生」という響きはいいものの、ニュースなんかでは「民事再生で倒産」とか、良く分からないところもあるので、民事再生について、さらに突っ込んで聞いてみることにしました。https://債務整理新潟.com/

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小澤 和彦 弁護士からのコメント

おそらく、相談者の方も、なんだか従業員に対する恨みつらみが、いつの間にか、会社の倒産処理に話が行ってしまってかなり動揺していたのだと思いますが、弁護士からの説明としては、1)私的整理(私的整理ガイドラインを含む)と2)法的整理を説明いたしました。私的整理というのは要するに裁判所を介さない会社再建であり、法的整理は、会社再建を前提とする民事再生と会社を畳むことを前提とする破産をご説明したつもりです。さらには、私的整理と一口にいっても、中小企業再生支援協議会を利用するものや特定調停やいろいろなパターンがありますが、最近、増えている方法としては、「私的整理ガイドライン」に則ったものです。過剰債務が経営を圧迫していて、経営を継続することが困難な状況にある会社の再建を目的としたものです(清算型もあります)。ただし、「事業価値があり、重要な事業部門で営業利益を計上しているなど債権者の支援により再建の可能性があること」という要件があります。これが最も大事です。超重要ポイントです。これがないとダメです。借金の返済さえなければ会社が回る、という事実ですね。経営が傾いてきた会社の社長さんからの相談で、「今の事業はダメなんですけど、新事業を考えていて、これならうまく行くはずなんです。」とおっしゃられる場合がありますが、これはまず無理です。そんな、捕らぬ狸の皮算用をせっせと事業計画書にしたとしても、どの銀行も見てもくれません。その意味では、今の仕事を頑張ることが何よりも重要という当たり前の結論に行きつきます。あとは、重要ポイントは、リストラです。これも、当然ですが、どの社長さんも嫌がります。怖がると言ってもよいでしょうか。ですので、いい社長さんなんですね。「従業員を路頭に迷わせたくない。」「長年、会社について来てくれた。」「能力はイマイチだけど、真面目で素直ないいやつなんです。」「あいつは今年、子供が生まれたばかりなんです。」「住宅ローンを抱えちゃっているんで会社が首になったら、あいつは破産しちゃう。」と、どの社長さんも、なんとか従業員の首切りだけは回避して、別の方法を考えてください、と言います。ですが、人件費以外で削れる固定費って、そんなにないんですよね。これができないまま、ズルズルと会社が破産してしまったケースもよくあります。そして、これは債権者側からの要件になりますが、「法的整理(民事再生)をとると、そのこと自体で会社がつぶれてしまうおそれがあること」と「法的整理(民事再生)をするよりも、より多くの回収が見込めること」が必要になります。だからこそ、銀行も私的整理にのってくるんです。ただ、「私的」という言葉が示すように、オブザーバーないし監督的役割の人がいないと、単なる、当事者間で、「再建の見込みがある」「いやない」「民事再生よりも得である」「いや違う」という言い争いにしかならない恐れがあります。そこで、私的整理ガイドラインをするにしても、債権者からの信頼が得られるような説得力をもつ弁護士をつけられるかどうかが再建の成否に大きく依存しております。なお、費用については、法的整理ではないので、私的整理の方が安くつくのではないかと思われるかもしれませんが、必ずしも、私的整理であるから、法的整理に比べて費用がかからないとはいえません。